今年、白レザースニーカーがキテいます。
いや、昔から定番だろって思う方もいると思いますが、違うんです。今年は本当にキテいるんです。
今まで白レザースニーカーに力を入れていなかったブランドから積極的に白スニーカーがリリースされており、スニーカーショップに行ってみれば一目でわかると思いますが、店頭の壁に展示されているスニーカーの取り揃えが明らかに白レザーが増えているのは一目瞭然です。
その代わりに衰退していっているジャンルがあります。それが近年のトレンドであったダッドシューズです。
何故、白レザースニーカーが復活し、ダッドシューズが終わりを迎えているのか。
それを近年のスニーカーの流行の歴史を追いながら解説していきます。
目次
ファッションの歴史から見る白スニーカー流行の背景
今回は、2010年頃から2021年ころまでの約10年間の流れを追いながら、白スニーカーの再評価について考えていきましょう。
iPhone登場~ノームコアの台頭
近年のファッションの歴史の中で大きな転換点となったのは、iPhoneの流行によるライフスタイルの変化やGAFAと呼ばれるIT企業の台頭を背景として巻き起こった、ノームコアムーブメントです。
「究極の普通」と言われる、シンプルで飾らず、モノを持ち過ぎないスタイルが世界で評価され、仕事においても私服で働くワークスタイルが定着するなど、スニーカーの活躍する場面が多くなり、シンプルな服装にアクセントを出せるスニーカーには大きな追い風になりました。
この時期にはニューバランスを始めとしたグレーやネイビーのスニーカーが流行しましたね。
特にスティーブジョブズが着用したニューバランスの990や、リバイバルされたM1300は奪い合いの大ブームになりました。
[ニューバランス] 990 スニーカー Dワイズ MADE IN USA グレー M990GL5 US10.0-28.0 [並行輸入品]
史上最大の「復刻ブーム」の到来
そんな、スニーカーに追い風が吹きだした後、さらに勢いづけたのが、2015年前後の復刻ブームです。
2015年前後というのが、エアマックス95から20年だったり、スタンスミスがブランドローンチから50周年だったりと数々の名作スニーカーの記念年に当たったことなどから、歴史的な復刻版が続々とリリースされました。(中にはこじつけっぽいものもありましたが…)
さらに、この時期から流行しはじめたメルカリなどのフリマサービスの影響もあり、数量限定モデルには転売ヤーが殺到し、本来の価値以上に値段が上がるインフレ状態が起きるなど、投機対象としてのスニーカーという考え方が出始めたのもこの頃です。
この時期には上で挙げたエアマックス、スタンスミスの他にも、アシックスが「アシックスタイガー」ブランドを復刻したり、プーマがスウェードシリーズを復刻するなど、多くの名作が再評価され、ノームコアムーブメントの一巡でシンプル過ぎるスニーカーに飽きが来ていた消費者心理にガッチリとはまり、スニーカーブームのステージをさらに一段上げることに一役買いました。
[ナイキ] AIR MAX 95 OG NEON YELLOW 2020 エアマックス95 OG ネオンイエロー/イエローグラデ CT 1689-001 …
復刻ブームの一巡~ハイテクスニーカーブームへ
復刻ブームが一巡し、消費者がノームコア的なシンプルな装いに飽き始めたところに、オシャレ上級者の中で流行り始めたのがタッキーファッションです。
関連:超オシャレ上級者たちの遊び『タッキー』ファッションとは何だったのか?
タッキーファッションは、原色のコントラストの激しい色合いの小物や衣服を積極的に使い、それを上手に着こなそうというムーブメントです。このタッキーファッションは、難易度が高く一般には普及しませんでしたが、そのエッセンスはすぐハイテクスニーカーブームへ引き継がれます。
名作ランニングシューズをベースとしたハイテクスニーカーは、機能性だけでなく、色使いにも特徴があり、多色使いであったり、原色を取り入れるなど、タッキーほどケバケバしくは無いものの、ワンポイントとしてのインパクトは十分で、ファッションアイテムとして急速に取り入れられるようになりました。
かつてはナイキのエアマックスとともにハイテクスニーカーの代名詞として人気を博したリーボックのインスタポンプシリーズは、デザイン性の高さ、他のスニーカーと一線を画すインパクト、カラーバリエーションの豊富さなどから、一時(未だに)人気カラーは入手困難な状況が続き、20年ぶりの再ブレイクを果たしましたね。
関連:【ド派手&ハイテク】リーボック『インスタポンプフューリー』の特徴と人気色
ハイテクブーム~ダッドシューズブームへ
そして、そのハイテクスニーカーブームが行くところまで行った結果が「ダッドシューズ」ブームです。
ダッドシューズとは「お父さんのような靴」という意味で、ファッションに興味のないお父さんがスーパーで買ってきたスニーカーのような、無駄に機能的で複数の差し色が使われた全体的にぽってりとしたスタイルの、一見するとダサいスニーカーを指します。
関連:ダッドシューズとは何だったのか|ダサさと紙一重の代表的シューズを解説
ただし、市販されたダッドシューズは、ダッドシューズ的な多色使い、パーツ多め、ぽってり感強めという文法はそのままに現代的な解釈でリデザインされており、それを巧みに着こなすことがオシャレであるということで、昨年までは各メーカー色味の強いゴテゴテしたデザインのスニーカーを続々とリリースしていました。
ダッドシューズが短命に終わった理由
そして、冒頭にも書いた通り、今年は改めて白レザースニーカーが再認識されています。
それは、過去の歴史の中で言えば、ダッドシューズまで行きすぎてしまった派手路線・強個性路線から、シンプルへの回帰であると言えます。
ちなみに、ダッドシューズが短命に終わった理由としては、やはりその着回しの難しさと若者の間でしか流行らなかったという点にあったと思います。
また、外的要因で言えば、メイン層の若者がコロナによって外出機会を失い、洋服を頻繁に買い替えたり、ファッションに気を遣わなければならない場面が少なくなってしまったことの影響もあるかもしれません。
あとは、そもそもマーケティングとして本当にダッドシューズが売れていたのか?という問題はありそうです。
ブームの一つとして積極的に製造されてはいましたが、何だかんだと定番商品に帰ってくるユーザーも多く、商業的に本当に成功したムーブメントだったのかといえば疑問符のつく結果だったのではないでしょうか?
白レザースニーカーの追い風になったコロナの外出自粛
さて、白レザースニーカーの話に戻りましょう。
元々、白レザーのスニーカーは人気ではありましたが、汚れやすい、メンテナンスが難しいなどの弱点があり、日常的には使い方の難しいカラーではありました。
その追い風になったのは、奇しくもコロナウイルスの流行にあると思っています。
汚れやすく、天候を選ぶ白スニーカーですが、コロナウイルスによって外出機会が減ることにより、かえって美しさが続くようになり商品としてのライフタイムが長くなりました。
さらに、たまの外出の際にも、基本的に在宅が推奨されているため悪天候下で無理に出掛ける意味がなくなり、人々が天気の良い日を選んで出掛けるようになったため、さらに汚れが付きづらくなるわけです。
すると、そもそもファッション性が高い白スニーカーを選ばない理由がなくなるわけです。
また、デザイン面でも、前の流行であるダッドシューズは白地に色を使うデザインが多かったため、ノームコアのローテクシンプル路線から、徐々にハイテク派手路線に行き、ダッドでやや派手路線が薄まってからの白レザーへの回帰は至って自然な流れでもあると言えます。
押さえておくべき最新白レザースニーカー4選
最後に、今年押さえておくべき白レザースニーカーを4足ご紹介します。
今年は、今まで白スニーカーはあまり作ってきていなかったアシックスが、主要ラインであるゲルライト3、ゲルライト5で待望の白レザーモデルをリリースしたことが最大のトピックスだと思っています。
ASICS GEL-LYTE3 OG White
ゲルライト3は近年多色スニーカーばかりで好みが分かれるラインナップだったので、この原点回帰ともいえるシンプルな白レザーモデルはゲルライト3ファンとしては最高にうれしいですね。
アシックスならではの「スプリットタン」の楽さは、一度なれてしまうと、普通のベロ型のシュータンが履けなくなってしまう心地よさです。
ASICS GEL-LYTE5 OG White
さらに、履き心地ではゲルライト3を上回ると言われるゲルライト5でも同じく白レザーモデルが同時にリリースされています。
比較的スリムなデザインのゲルライト3よりもぽってりとボリューム感がある分、足元にインパクトが出るので、女性が着用すると足長効果が出て良いのではないでしょうか。
NIKE JORDAN1 White Leather
ナイキも定番の白レザースニーカー「エアフォースワン」に加え、今年はジョーダンワンの白レザーも一押ししています。
夏商戦に向けて、バッシュ感を押さえたローカットバージョンとなっており、合わせやすさも抜群です。白エアフォースワンがあまりにも普及しすぎてしまった感がありますので、ここであえてのジョーダンワンという選択は大いにありです。
世界長パンサー PANTHER JOGGING LE “Made in JAPAN” WHITE
知る人ぞ知る老舗日本ブランドである「世界長パンサー」も従来のクラシックな見た目のスニーカーだけでなく、現代的なソールを搭載した高級皮革モデルをリリースしました。
今までのパンサーはちょっとクラシックすぎて難しいと思っていた方も、この一足にはパンサーに対する見方が変わるのではないでしょうか?
80年代に発売されていたジョギングシューズを現代的にリデザインし、上質なレザーを厳選して日本の職人が仕上げた世界長パンサーのイメージを一新する一足です。