
バンズやコンバースなどのローテクスニーカーを見ていると、稀に目にする「バルカナイズド製法」という言葉。
あー、はいはいアレね!
…とは言いながら、ちゃんとその製法や特徴を理解できている人は少ないのではないでしょうか?
今日は、スニーカーファンなら知ったかぶりではいられない「バルカナイズ製法」について調べてみましょう。
目次
今さら聞けない「バルカナイズ製法」とは?
バルカナイズ製法とは、スニーカーの最も基本的な作り方と言われています。
スニーカーは足の甲部分の布地であるアッパーと、靴底のゴム素材であるソールでできています。基本的に布とゴムは全くの異素材のため、くっつけて十分な強度を出すのは大変難しいのですが、それを可能にしたのがバルカナイゼイション技術です。
生ゴムが硫黄と熱を加えると硬化する化学変化に注目したのが技術の基礎で、アッパーとソールを定位置にセットしたのち、その間に固まる前の生ゴムを流し込んで接着。硫黄で満たした釜で熱と圧力をかけることでアッパーとソールを隙間なく圧着するという技術。
それが、「バルカナイズ製法」です。
100度以上の釜で1時間以上加熱した上、冷ますために長時間大型扇風機の風に晒したり、工場内は煙と薬品の匂いで充満するため高額な設備が必要になるなど、大変手間とコストがかかる製法です。
しかし、その結果作られたスニーカーのなんとも言えないレトロ味と、軽さや耐久性などの性能面からファンが多く、ロングランの商品が多いのが特徴となっています。
バルカナイズ製法のスニーカーの特徴

バルカナイズ製法は異なる素材の圧着でも、流体状態のゴムを急加熱で硬化させ素材同士をダイレクトに圧着するため、接着剤を使用したスニーカーよりもしなやかで屈曲運動に強く、加水分解などの経年劣化にも強いという特徴があります。
また、製造上の特徴から靴底がフラットのスニーカーが多いので、スケートボードのような接地面積の広さと静止状態でのグリップ性が求められるスニーカーで多く用いられています。
逆に欠点としては、ソールを圧着してしまっているので、すり減ったり壊れたりしても修理ができないということが挙げられます。
また、横方向への動きをサポートするため、ラバーテープがソールとアッパーの間に巻かれますが、この部分が歩いているうちに指の付け根あたりからはがれやすいという点があります。まあ、それも含めて味なんですけどね。
バルカナイズド製法の歴史
チャールズ・グッドイヤーによる基礎技術の発見

バルカナイズ製法の基礎技術である「バルカナイゼイション」が開発されたのは、今から180年近く前の1839年。
アメリカのチャールズ・グッドイヤーという金物屋が、人生の一発逆転のためゴムに賭けたのが始まりです。
当時からゴム製品はあったものの品質面に問題があり、劣化しやすかったり、ゴム特有の粘り気や匂いが取れないというのが課題になっていました。
グッドイヤーも数々の実験失敗を繰り返しますが、ある偶然で奇跡的な発見をします。
ゴムに混ぜ物をすることで強度を上げられると考えていたグッドイヤーが、硫黄とゴムを混ぜる実験をしていた最中、誤ってストーブの上にゴムを落として放置してしまったのです。
その後、気づいて慌てて拾い上げると、黒焦げに見えたゴムは適度な弾力と理想の質感をまとい、現在のゴム製品の基礎となる品質を有していました。
これが原初の「バルカナイズドゴム」の誕生です。
発明家トーマス・ハンコックによる体系化

偶然的に発見されたグッドイヤーのゴムですが、偶然の産物であったが故に、理論的に構築されていませんでした。
その素材を入手した発明家のトーマス・ハンコックは、より安定的に品質の高いゴム製品を製造するため、製造理論を体系化に挑み、理論構築に成功します。
当時、防水着「マッキントッシュコート」の共同開発者としてすでに名を馳せていたハンコックは、この理論で製造したゴム生地、「マッキントッシュクロス」の製造に成功します。
そして、その高品質ゴムの製造工程を、火と鍛治の神「バルカン」になぞらえ、「バルカナイゼイション」と名付けたのです。
そして、ゴムメーカーがスニーカー作りを始める

ゴム製品が出回り始めた当初からシューズのソールに応用できないかと検討され続けていましたが、この技術が確立されたことで加速度的にゴム製品の自由度が高まり、念願のシューズ製造が可能になったのです。
しかし、理論が確立されたとはいえ、バルカナイズ製法には高いゴム加工技術が必要とされました。そのような背景から、ゴムソール搭載シューズづくりの中心をゴムメーカー担ったのは自然の流れだったと言えるでしょう。
その多くは現在でもほぼ形を変えずに定番モデルとして生き残っているほど、長く愛され続けています。
日本の「ムーンスター」もゴムの町久留米のゴムメーカーが発祥です。
バルカナイズ製法スニーカーを作っているブランド
そんなバルカナイズ製法を採用している代表的なブランドと代表作をご紹介。
バンズ-VANS
現在、バルカナイズ製法スニーカーの中でも入手しやすさ、モデルのかっこよさで最も人気のあるのがバンズ。
コンバース-CONVERSE
バルカナイズ製法スニーカーの老舗コンバースの代表作と言えば、ジャックパーセルやオールスター。スニーカーのつま先を全て覆うような巻き込み加工が特徴。
スピングルムーブ-SPINGLE MOVE
日本でこだわりのバルカナイズスニーカーを作り続けるスピングルムーブ。日本で3箇所ほどしかないと言われるバルカナイズ製法釜の一つです。
PFフライヤーズ-PF FLYERS
ベーシックで安いスニーカーとして人気のPFフライヤーズ。コンバースのオールスターにも似たハイカットスニーカーが女子に人気です。
ケッズ-KEDS
「スニーカー」という言葉を生み出した元祖でもあるケッズ。当初はゴム底で音がしないため「スニーキング(忍び込む)」という意味からスニーカーという名前がついたとか。
スペルガ-SPERGA
南イタリアのセレブブランドスペルガ。美しいカラフルなキャンバスと厚手のソールを圧着した、これぞバルカナイズ製法というスニーカーです。